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Jeju, Island of World Peace

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'東北アジアプラス責任共同体
등록일
2017-12-20
조회수
5

"東北アジアプラス責任共同体"について考える

  [caption id="" align="alignright" width="110"] 小林 聡明
日本大学法学部 准教授[/caption] はじめに だが、文在寅政権による地域協力構想について検討することは、決して無駄なことではない。むしろ、どのようにすれば、私たちが暮らす地域に平和を打ち立て、繁栄を維持・発展させることができるのかを考える知的営みの一端を担っている。以上のような問題意識をもって、本稿では、文在寅政権が、「東北アジアプラス責任共同体」構想を推進していこうとするのであれば、その課題は何かについて考えてみたい。   地域協力推進の制約要因 日本政府は、北東アジアにおける多者間協力に肯定的な姿勢を示しており、日中韓による協力を推進させたいとの意思を明確にしている。さらに、第二次安倍政権では、インドやASEANを視野にいれ、それまでの(北)東アジアの地域概念を拡大させた多国間協力関係を推進しようとしている。   韓国の前政権も、地域協力の重要性を認識し、「東北アジア平和協力構想」を掲げていた。地域協力を推進することの重要性は、日韓 の政府レベルで確認されてきた。2015年11月にソウルで開催された日中韓サミットにおいて、「北東アジアにおける平和と協力のための共同宣言」が採択された。そこでは、日中韓協力事務局(TCS)が3ヵ国協力の推進に努力してきたことを評価したうえで、3ヵ国協力のさらなる制度化と、対話と協力のプロセスの進展が謳われた。そして、日中首脳による韓国の「東北アジア平和協力構想」への高い評価・歓迎の意が示され、さらなる発展を目指すことが合意された。   2017年5月に発足した文在寅政権は、前政権の「東北アジア平和協力構想」を継承し、インドやASEANを加えた「東北アジアプラス責任共同体」として地域協力の拡大発展を試みようとしている。そこでは、「平和の軸」と「繁栄の軸」の二つの軸が設定され、前者を「平和共同体プラットフォーム」として、後者を「新北方政策」と「新南方政策」として、それぞれの課題と実践を通じて、同構想の実現を目指している。これらは、安全保障と経済・社会発展という二つの側面から、地域協力を推進していこうとするものであり、さらにインドやASEANを含む地域的範囲の拡大という側面からも、日本外交による地域協力拡大の方向性と十分に重なりあっている。にもかかわらず、地域協力をさせるべく日韓の「共闘関係」は十分に築けていない。それは、なぜなのか。   第一に、日韓間に存在する中国への向き合い方をめぐる差異である。韓国は、対中、対米関係の間で、ジレンマに陥っている。安全保障(=平和の軸)は日米韓で対応し、経済(=繁栄)では、中国との協力関係を深化させようとしている。詳しくは安全保障や国際関係の専門家に議論を委ねたいが、これが果たして可能なのか。可能であれば、どのようなロジックで成立するのか。それについての明確な説明抜きにして、日韓に生じている差異は埋まらないだろう。 第二の要因は、日韓関係自体の不安定さである。「東北アジアプラス責任共同体」構想を実現させるためには、日韓関係の改善と、関係強化は必要不可欠である。だが、実際には、歴史や領土をめぐって、政府間だけでなく、国民間の感情も悪化したままとなっている。   日韓関係の不安定さと、そこにたたみ込まれた韓国への否定的な日本人の感情は、文在寅政権による「東北アジアプラス責任共同体」構想に対して、日本政府・国民から理解と協力の獲得を困難にする。文在寅政権が「東北アジアプラス責任共同体」を推進しようとするならば、当然のことであるが、こうした対韓感情の問題から目を背けることはできないであろう。   以上を踏まえ、本稿では、第二の要因に照準し、広報外交と、日韓協力のあり方という二つの点から、「東北アジアプラス責任共同体」構想の課題について考えてみたい。     広報外交の重要性-誰に、何を語るのか 日本社会における否定的な対韓感情の広がりは、韓国への反発や差別的な言説を顕在化させ、同時に韓国に対する無関心層を拡大させる。こうした状況のなかで、韓国の地域協力構想への社会的関心は希薄であり、ほとんど知られていないないのも、ある意味、当然である。実際、朴槿惠政権が提唱した「東北アジア平和協力構想」や、文在寅政権が掲げている「東北アジアプラス責任共同体」について、日本のジャーナリズムでの報道ぶりは、きわめて低調である。   全国紙の各データベースを用いて、現在(2017年11月30日時点)までの「東北アジア平和協力構想」や「東北アジアプラス責任共同体」に関する報道を見てみたい。「東北アジア平和協力構想」に関する報道は、朝日新聞が6件(うち社説2件)、読売新聞も6件、毎日新聞が2件、日経新聞は3件、産経新聞も3件がヒットするのみである。文在寅政権の「東北アジアプラス責任共同体」については、全国紙において、現在まで報じられていない。   アカデミズムでは、どうか。日本の代表的な論文検索サイト(CiNii: NII学術情報ナビゲータ)では、「東北アジア平和協力構想」を主題とした論文は2本のみであり、いずれも韓国の研究者によるものである。「東北アジアプラス責任共同体」に関する論文は皆無である。   以上の状況を踏まえるならば、まずは日本のジャーナリストや研究者に対して、「東北アジアプラス責任共同体」の意義や目的を十分に説明する広報外交を展開することが必要になるであろう。だが、そこで大事なことは、一方通行の「説明」ではなく、日韓のジャーナリストや研究者のあいだで対話を積み重ねていくセカンド・トラック、あるいは1.5トラックの形式が望ましいであろう。場合によっては、こうした場に日韓関係の未来を担う大学生の参加を呼びかけてもいいだろう。その際、次の問いに明確に答える必要がある。なぜ、地域協力が、韓国が提唱する<かたち>でなければならないのか。この問いへの答を抜きにして、ジャーナリストや研究者の関心を喚起させるのは難しいだろう。   日韓協力の形-共に方法を考えるということ いくつもの世論調査が示すように、日本社会における韓国への否定的な感情表出の背後には、「歴史」や「領土」をめぐる日韓の対立構造と、それによって刺激された両国民のナショナリズムの高まりが存在している。なかでも歴史問題は、2015年12月に日韓両政府による「慰安婦合意」が成し遂げられたあとも、対立は終局せず、両国の国民感情に劇的な変化は見受けられない。歴史をめぐる日韓両国民間の不信は解消されず、互いのナショナリズムは依然として高止まりしている。文在寅政権が、「東北アジアプラス責任共同体」を推進していこうとするならば、日本の対韓感情だけでなく、韓国の対日感情を改善する必要があり、そのためには、日韓間での真の歴史和解を実現させることが必須の前提となる。   これまで多くの日韓の市民やNGO、研究者やマスコミ、そして政府関係者が、歴史をめぐる対立構造に終止符をうち、真の和解を成し遂げるべく、幾多の努力を積み重ねてきた。だが、いまだ真の和解が実現しておらず、歴史問題が、日韓間の最大の懸案の一つになり続けている。こうした現状を踏まえるならば、本稿で、歴史問題を解決させる、魔法のような解法を提示できるわけがない。 だが、和解のための前提であれば、指摘することができる。それは、日韓双方が、歴史をそれぞれの国民の物語として位置づけ、自らの民族的価値を反映させながら読み込む作業に固執するのではない。むしろ、双方で対立する歴史認識のなかから、女性の尊厳の尊重や戦時暴力の廃絶といった普遍的な価値を抽出する作業に努力を傾けることである。その際、互いのナショナリズムを高めてしまう可能性を排除するために、抽出された普遍的な価値をめぐって、日韓の政府・国民間で争うべきではない。普遍的な価値を媒介として、日韓間で相互信頼や理解を深め、それをベースとして、新たな関係構築に向けた国民的意思が共有される必要がある。これは、日韓間に横たわる歴史問題を克服すべく真の和解の実現にむけた、重要な一つのプロセスとして位置づけられよう。   周知のとおり、こうした国民的意思の共有は決して容易なものではない。だが、歴史問題の克服を抜きにして、日韓関係の発展は望めず、日韓両国を含む巨大な空間における地域協力の推進を想定することは、きわめて困難である。経済と歴史を切り分けて、日韓関係の緊密化をはかるという意見もあろう。だが、歴史をめぐって、たびたび日韓関係の発展は頓挫してきた。切り分けを行うのではなく、いまこそ歴史問題の克服、そして日韓の政府・国民間での歴史和解を目指すべきであり、それと同時並行する形で、できることから一つずつ日韓協力を推進していくべきである。 それでは、どのような日韓協力のあり方がありうるのか。日韓双方の社会は、北朝鮮問題のほか、高齢化や環境、格差といったさまざまな問題を共有している。だが、ここでは、「東北アジアプラス責任共同体」構想に即して、日韓協力の一つの形について、最後に述べておきたい。   すでに見てきたように、日韓両政府の地域協力構想では、インドやASEANを包括する地域を想定するなど、一定程度の方向性を旧有している。とりわけ両政府ともにインドとの関係が重要であるとの認識で一致している。日本は、インドとの関係を深化させており、韓国も関係の構築・強化を目指している。だが、中国への配慮から、韓国では、いくぶん躊躇する様子も見受けられる。日韓両政府は、中国の「一帯一路」などとの連携を念頭に置きながら、どのようにインドとの関係強化を進めることができるのか。その方法を、共に講究するすることが、日韓協力の一つの形としてあり得るであろう。たしかに小さな協力の形かもしれない。だが、こうした協力関係を少しずつでも積み重ねながら、歴史問題の克服もあわせて目指していくこと。このことこそが、文在寅政権による「東北アジアプラス責任共同体」構想の推進にとって、大切な試みの一つになってくるように思われる。